木の話 : 無垢材の特徴
日本の木の伝統文化は、奈良の法隆寺(世界最大・最古の木造建築)に代表されるように世界に誇れるものです。日本人は古くから木をうまく使い、共に暮らしてきました。
しかし、昭和40年代頃から使われるようになった合板と呼ばれる人工の建材が日本の家づくりをおかしな方向に変えてしまっています。
キムラ工房では、無垢の木を使った家づくりにこだわっています。
無垢の木は、呼吸する、湿気を吸う、においを吸うといった人にやさしい特性があり、さらに、ひっぱりや圧力に強く、温かいという特性もあります。
また、桐は虫や菌を防ぐ成分を持ち、ヒバはシロアリの嫌う成分を出すといった特徴があり、樹木から木材へとその姿は変わっても「無垢の木」の自然の力は保たれます。
以下では、建材として使う場合の無垢材の特徴をお話します。
無垢材はすばらしい建築材料ですが、
短所があることも知っておいてください。
木材はなぜ強いか?
▲赤松 (無垢材) 木は意外なことに、鉄やセメントなどより、ひっぱりや圧力に対して強いのです。だから法隆寺など千年以上建ち続けているのです。
▲米松 (無垢材) 古民家にも百年以上経っているものが多く残っています。
それは、木材が木の幹から切り出されるからです。
木の幹は、数百トンという木の重さを支え、樹液を送り続け、何百年もの間風雪に耐えて立つ強さをもっています。
木は木材となってからも、この木の幹の性質を受け継いでいるのです。
無垢の木は、幹の性質をそのまま受け継いでいます。
無垢の木はなぜ温かいか?
▲桐(キリ) (無垢材)切り出された木材は、人工的に乾燥することによって水分を抜き、変形・収縮しないレベルにします。
水分を抜かれた細胞には空気が含まれます。これが無垢の木材の最大の特徴です。空気を含んだ木材は、断熱・蓄熱・調湿能力をもっています。だから、無垢の木は温かいのです。
無垢の木の短所
木は大量の水分を含んでいます。生木の状態では、種類によっては重量の半分以上が水分です。
木材は乾いて水分を失う段階で、縮んだり反ったりします。よく乾かさない無垢の木を建材として使うと、後で家に狂いが生じてきます。
昔、大きな家を建てる時には、仮組みしたまま数年、時には10年以上置いておいたそうです。木が乾いて落ち着くのを待って、もう一度本組みして、建具を入れ完成させるのです。
今では、木材は乾燥室で高温で人工乾燥させますが、乾燥不足のものも市場に出ています。
木材の乾燥不足からくる完成後の狂い、これが無垢の家を建てるうえでの1番の弱点です。
木の話 : 乾燥が最も大切
無垢の木の家を建てる上で最も大切なことは「木材の乾燥」です。
木材がどのくらい乾燥しているかを、専門用語では「含水率」という言葉で表します。「含水率」とは、木材重量に対する含んでいる水分重量の割合を示します。
含水率0%の木材は水を全く含んでいない状態です。例えば、杉の木は森に立っている状態で、木材重量10に対し、水分重量は15です。つまり含水率は150%となります。
キムラ工房では、2010年に敷地内に乾燥窯を建て、含水率の少ない木材を自社生産する取り組みを進めています。▲含水率の記録
そのほかの自然素材
無垢の木のほか、珪藻土や高温で作られた炭、火山灰といった自然素材にも、湿気を吸いにおいを吸うといった特性があり、当社ではこれらを使って家を仕上げています。
詳しくは お問い合わせください。
では、合板とは?
合板とは?
一般に、ベニヤ板もプリント化粧合板もMDFも、人工的に作られた木質建材をなんとなく合板と呼んでいると思います。専門的には木質材料と呼び、大きく2つのタイプに分けられます。
合板
ベニヤ板やプリント化粧合板などです。木材を薄くむいた板を接着剤で張り合わせて1枚の板にしたものです。
▼合板の断面
木質ボード
木材のチップを合成樹脂接着剤で固めて板状にしたパーティクルボード、木材を一度繊維化し板状に成型したファイバーボードなどがあります。よく家具などで目にするMDF(中質繊維版)はファイバーボードの一種です。
合板と木質ボードを合体させたものもあります。フローリング材として、MDFを芯にして表面に薄い板を貼り付けたものがよく使われています。
ここでは、こういった木質材料をひっくるめて合板と呼ぶことにします。
合板にもいいところはあります。合板なら無垢材では難しい、大きくて品質の一定した板を安価に作ることができます。
そして、貼り合わせたり成型した板ですので、建材として使ったとき狂いも少ないのです。また、セメントなどの無機質を混ぜ合わせて成型し、燃えにくく耐久性の高い建材を作り出すこともできます。
シックハウスの原因としてよく取り上げられるホルムアルデヒドですが、合板の全てがホルムアルデヒドを放出するわけではありません。非ホルムアルデヒド系の接着剤を使用したものも多くあります。
家だけに留まらず、家具、家電など、シックハウス対策は今後ますます強くなっていくでしょう。
では、なぜ合板の家をつくらないのか?
合板は日本の家づくりを規格化、粗雑化しました
合板は、大きくて狂いの少ない板を安価に大量に作れます。それをプレカットしておいて現場で組み立てるようにすれば、安価な家を大量につくれます。
しかし、それは大工の腕の見せ所も、設計士の頭の悩ませ所もない大量生産の家です。
まるで工場のように家をつくることが、私たちの業界の一部をおかしくしたと思います。職人のプライドのない手抜きの仕事、住む人の生活を想像する努力を怠った意匠設計、儲け優先で安全保障のない構造設計、そんなものをはびこらせてしまったと思います。
私たちは、八ケ岳の麓に同じ志のものが集まってつくった小さな工務店です。
大手のハウスメーカーと同じことをする必要はありません。小さな工務店にしかできない、手づくりの家をつくりたいのです。
合板を使わなくても、家の中に化学物質は入り込んできます
合板の有害物質放出規制はさらに強まるでしょう。
だから合板を使って家をつくっても安全だとは考えません。
私たちは、家の中に化学物質を含むものを気づかずにたくさん持ち込んでいると思います。家具・家電・衣類・食品包装材・おもちゃなどなど、完全な自然素材だけに囲まれて暮らすことは不可能です。
それら一つ一つは安全でも、積み重なれば何らかの有害なものを放出しているかもしれません。
実は、私たちが家づくりに使う材料も全て自然素材かといえばそうではありません。断熱材や防水材など、快適に暮らせる家をつくるためには、どうしても化学物質に頼らざるを得ません。
それなのに、家の一番大きな面積を占める床や天井や壁や柱に、どうして合板を使う必要があるでしょうか?
無垢の木で家を建てた方が、安心してお客さまにお引渡しできるのです。
集成材について
集成材は、細い角材や挽き板を接着剤を用いて集成接着して必要な大きさの部材にしたものです。合板に比べ木そのものの質感が得られますが、接着剤を使っている点では合板と変わりません。
▲集成材の断面
キムラ工房では、お客さまの要望があれば、必要最小限の集成材は使います。
それは主にコスト面の理由です。コストの面で無垢の木の家をあきらめるよりは、一部を集成材にしても、その良さを体感していただく方がいいと考えるからです。